近年、キャリアの選択肢が増え、多様な働き方が広がる中で、30代の方が中小企業への転職を検討するケースが増えています。
一般的には、中小企業よりも大手企業での安定感や知名度が魅力的と感じるものです。
そのため、大手企業に比べて知名度や規模が小さい中小企業に転職することは、リスクが伴うように感じられるかもしれません。
しかし、中小企業には意外と数々の魅力が潜んでいます。
この記事では、30代の方が中小企業に転職する際のメリットについてご紹介します。
中小企業とは
30代の方が中小企業に転職するメリットを知るにあたり、まずは中小企業について簡単にご説明します。
中小企業には定義があり、「中小企業基本法」という法律で業種ごとに定められています。
詳しくは以下の通りです。
業種分類 | 資本金の額又は 出資の総額(会社) | 常時使用する従業員数 |
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
「資本金の額又は出資の総額」と「常時使用する従業員数」によって定義されているのですが、両方の条件を満たす必要はなく、どちらかさえ当てはまれば中小企業に該当します。
なお、大企業については特に定義はありませんが、一般的に中小企業の定義を超える企業が大企業です。
中小企業へ転職する30代のメリット
中小企業の定義を知ったところで、30代の方が中小企業に転職するメリットについてご紹介していきます。
転勤から解放される
大手企業は各地域に支店や店舗を展開しているケースが多いため、どうしても引っ越しを伴う転勤を命じられる機会が増えてしまいます。
例えば、東京から大阪へ、あるいは東京から北海道へなど、必要とされる地域へ転勤を命じられるのです。
このとき、30代の方の多くは引っ越しを伴う転勤は望みません。
なぜなら、「住み慣れた地域がいい」「家庭持ちだし困る」などを理由に、わざわざ引っ越ししてまで転勤したいとは思わないからです。
しかし、会社の就業規則に転勤についての記載がある場合、基本的に自己都合で転勤を拒否することはできません。
その理由は、企業が労働者に対して「人事権」を持っているからです。
人事権とは、採用、配置、異動、人事考課、昇進、昇格、降格、求職、解雇など、企業組織における労働者の地位の変動や処遇に関する使用者の決定権限を指します。
このとき、転勤についても以下のように人事権が認められているため、転勤を命じられると基本的に拒否できません。
(人事異動)
厚生労働省 転勤に関する参考資料
第8条 会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び
従事する業務の変更を命ずることがある。
2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向さ
せることがある。
3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。
中には頑なに拒否する30代の方もいるのですが、必要ある転勤の場合は認めらず、「懲戒解雇」や自ら退職することを促す「退職勧奨」の対象となってしまいます。
実際のところ、転勤を理由にやむなく退職する人は多く、私も転勤を理由に退職を経験しました。
それに比べ、中小企業に転職すると、引っ越しを伴う転勤はほとんどありません。
もちろん、中小企業の規模によって異なりますが、基本的に地域に密着した会社である場合が多いため、あっても転勤ではなく引っ越しを必要としない「異動」を命じられるくらいです。
そのため、転勤から解放されたい30代の方には、中小企業への転職はメリットが大きいと言えるでしょう。
意思決定が早くアイデアも採用されやすい
中小企業の多くは、経営者や上司との距離が近いため、何かあればすぐに相談できる魅力があります。
例えば、仕事を通して良いアイデアが浮かんだ際、経営者や上司に相談すると、その場でアイデアを採用されることも珍しくはありません。
つまり、中小企業では経営者や上司との意思疎通がしやすく、何か提案や意見をしたいときは、直接交渉をすることのできるメリットがあるのです。
そのため、自分のアイデアや提案を積極的に出すことができ、仮にアイデアが採用されたときには、やりがいを感じることができます。
なお、企業によっては個人的なお願いを聞いてもらえることもあります。
具体的には、以下のようなお願いです。
- 通院をしているので、週に1回は仕事中に抜けさせてほしい
- 子どもを預けている保育園から連絡があったので早退させてほしい
- 急に親が体調を崩したため休ませてほしい
このような事情を経営者へ直接交渉することで、対応してくれる中小企業は意外とたくさんあります。
対して、大手企業では良いアイデアが浮かんで相談してもすぐには対応してもらえず、個人的なお願いもほぼ認めてはもらえません。
仕事についてのアイデア等は、基本的に役員会議などで承認されなければ実行できないことが関係しています。
個人的なお願いについては認めてもらえるケースもありますが、ほとんど認めてもらえない可能性の方が高いです。
その理由は、一人の個人的なお願いを認めてしまうと、在籍する多くの社員と不平等が生じるためです。
しかし、中小企業に転職すると、こうした状況を回避できる傾向にあります。
組織内でのキャリアアップが早い
中小企業は大手企業と異なり、限られた人員の中で業務を遂行しなければいけません。
例えば、大手企業では営業部、企画部、経理部、人事部などの部署が設けられています。
大手企業で働く従業員は1,000人を超えることが普通であるため、それだけの部署に分けて人員を配置できるからです。
それに比べ、中小企業では限られた人員しかいないので、それほど細かく部署は分かれていません。
そのため、積極的に様々な仕事をする必要があります。
携わる業務が多いと大変ではありますが、それぞれの経験を積んでキャリアアップに繋げることができます。
なお、中小企業では経営者との距離が近いため、様々な業務をこなすと活躍している姿をアピールでき、年収アップも期待できるでしょう。
こうしたことは、大手企業で働くと従業員の多さから難しいので、中小企業に転職するメリットの一つと言えます。
30代が中小企業へ転職するデメリット
30代の方が中小企業へ転職すると、上述でご紹介したメリットが得られることがあります。
しかし、メリットのみ得られるわけではありません。
詳しくは、以下でご紹介をしていきます。
年収と福利厚生は大手企業ほど期待はできない
30代の方が中小企業へ転職する場合、大手企業よりも年収は下がる傾向にあります。
もちろん、必ず年収が下がるわけではありませんが、大手企業と比べると低くなるのが実情です。
中には、基本給が入社当初から上がることがなく、ボーナスが支給されない会社もあるくらいです。
なお、福利厚生においても大手企業ほど期待はできません。
例えば、大手企業では社会保険はもちろんのこと、家族手当、住宅費、リフレッシュ休暇、育児手当、資格手当など、様々な福利厚生が充実しています。
しかし、中小企業の場合は、法律で定められた福利厚生以外の手当がないことも珍しくないのです。
そのため、高い年収と充実した福利厚生の恩恵を受けたい30代の方には、中小企業への転職は向かないと言えます。
仕事の責任は重くなりがち
中小企業へ転職すると、様々な仕事をする必要があり、自分の能力を発揮すると早い段階でキャリアアップを期待することができます。
しかし、「裏を返せば仕事量が多くなり、責任も重たくなる」ことを意味します。
中小企業の多くは、大手企業ほど従業員が在籍していないため、どうしても個人の仕事量が増えて忙しくなりがちです。
当然ながら、仕事が増えた分だけ責任は重くなり、リスクも同じく大きくなります。
なお、私は従業員が30人ほどの中小企業へ転職したことがありますが、離職率の高さが影響して長時間残業をしてもギリギリな状態を経験しました。
つまり、少ない従業員の中から退職者が出ると、さらに仕事が忙しくなります。
転職先の中小企業によってはこうした可能性もあるため、従業員の人数や労働条件をよく調査して応募することが重要です。
企業としての安定感に欠けることもある
転職先となる中小企業によっては、企業としての安定感に欠ける場合があります。
例えば、ビジネスや資金調達がうまくいかなければ、当然ながら企業として成り立ちません。
実際に、こうした理由で会社が倒産して無職となる30代の方は多く、大手企業のように安定感は期待できないのです。
この他、世界的に影響を及ぼすような問題が発生しても、中小企業は大きな影響を受けやすい傾向にあります。
例えば、世界的な規模で流行するパンデミックが発生すると、高確率で日本経済に大きなダメージを与えます。
その際、中小企業もその煽りを受け、収益を生み出すことができずに倒産することもあるのです。
なお、大手企業の多くは「資本力」と「資金力」があるため、不況の影響は受けつつも倒産までに至らないケースの方が高いです。
しかし、中小企業は資本力・資金力のどちらもそれほどんないことが多く、どうしても企業としての安定感に欠けてしまいます。
中小企業への転職を目指す30代は転職エージェントを活用する
メリットとデメリットを把握したうえで中小企業の求人を探す場合、転職エージェントを活用すると、優良企業の求人を紹介してくれます。
もちろん、一人で転職活動をする方法もありますが、全てのことを自ら行わなくてはいけません。
例えば、求人検索や企業調査はもちろん、応募書類の作成と確認、面接対策、労働条件の交渉などです。
しかし、こうしたことを一人で行うことはとても大変です。
なお、求人情報だけで優良企業なのかを判断することは難しく、労働条件の交渉は素人が行うとほぼ失敗に終わるため、現実的ではありません。
ですが、転職エージェントを活用すると、豊富な経験と知識を持つキャリアアドバイザーがサポートしてくれるため、有利に転職活動を進めることができます。
具体的に、あなたが持つ経験やスキルを考慮し求人を紹介してくれる他、応募書類の添削、面接対策などのサポートを受けることができます。
また、労働条件もあなたを代行して求人先と交渉をしてくれるため、自ら行う必要はありません。
可能な限り、自分にとってメリットある中小企業への転職を実現するには、こうした優れたサポートを受けることも重要です。
中小企業への転職を目指す30代はメリット・デメリットを理解し応募する
30代の方が中小企業へ転職することには、意外と数々のメリットがあります。
自分の能力をフルに発揮でき、キャリアアップも早く、ワークライフバランスも取りやすいなどのメリットです。
もちろん、中小企業へ転職することにはメリットばかりではありません。
デメリットも存在し、企業によっては単なるデメリットでしかないこともあるのです。
そのため、優良企業といえる中小企業への転職を実現させるためにも、転職エージェントの活用も検討してみてください。
キャリアアドバイザーより優れたサポートを受けることができるので、有利に転職活動を進めることができるでしょう。
このように、中小企業に転職するメリット・デメリットを理解しつつ、優れたサポートを受けることで、安心できる企業求人に出会うことができるはずです。
転職活動を行う30代の方の多くは転職エージェントを利用しています。
もし一人で転職活動を行うと、求人探し、履歴書の作成、面接対策、労働条件の交渉など、転職に関わる全てを自分で行う必要があるからです。
それに比べ、転職エージェントを利用すると、キャリアや転職活動に関する専門的な知識と豊富な経験を持つキャリアアドバイザーが全面的にサポートしてくれます。
なお、30代の方に適した転職エージェントの情報を以下にまとめているので参考にしてみてください。