30代の年齢で転職をするとき、正社員として入社することを前提に転職活動をする方は少なくありません。
正社員であれば雇用が安定し、給与アップや昇進できるチャンスもありますし、福利厚生も充実しているので安心して働くことができます。
一方で、正社員ではなく契約社員として働くことを前提に、転職活動をする30代の方も意外とたくさんいます。
契約社員は、正社員のように仕事で責任を負わされることがほとんどなく、プライベートを重視した働き方を実現することが可能です。
また、なかなか入社できない大手や有名企業でも、契約社員であれば入社しやすいメリットがあります。
このような働き方に魅力を感じ、契約社員として転職をする30代の方もいるのですが、実際のところ転職しても問題ないのでしょうか。
この疑問について結論からお伝えすると、30代で契約社員へ転職することはおすすめできません。
もちろん、契約社員として働くことにも一定のメリットはありますが、総合的に判断するとやはりデメリットの方が高いので、正社員として転職するべきです。
本記事では、30代で契約社員へ転職するメリットとデメリットを知り、正社員として働くべき理由を解説していきます。
契約社員と正社員の違い
そもそも、契約社員と正社員とではどのような違いがあるのでしょうか。
簡単にご説明すると、契約社員と正社員はお互い同じ企業から直接雇用される働き方であるため、この点に違いはありません。
社会保険にも加入できますし、有給も正社員同様に取得できます。
ただ、正社員は終身雇用を前提とした「労働契約の期間に定めがない」働き方であるため、「自己都合」や「会社都合」で退職しない限りは定年まで働くことができます。
そのため、雇用は安定しており、年齢とともに給与アップや出世をしながら働くことが可能です。
一方で、契約社員は契約期間が定められた「有期労働契約」なので、雇用期間が満了すると更新しない限り退職となります。
契約期間は企業によって異なりますが、一般的に6ヵ月、1年、3年ごとの更新で、労働者と企業の合意のもと労働契約が成立します。
このとき、労働契約期間の終了間際に契約を延長する意思があれば、労働者と企業側の双方の合意のもとで延長は可能です。
しかし、労働者もしくは企業側のどちらかが契約延長をする意思がなければ、その時点で労働契約は満了し退職となります。
なお、一つの企業との間で労働契約期間が通算して5年を超えて更新された場合は、労働者が「契約を無期にしてください」と申込むことで、「無期労働契約」へと切り替えができます。
上記画像のように、労働契約期間が5年を超えると同時に無期労働契約を申し込むことで成立します。
ただし、労働契約期間に定めのない無期契約社員になったとしても、正社員と同じ待遇になるのかは企業により異なることを理解しておくことが重要です。
30代で契約社員へ転職するメリット
上述では、契約社員と正社員の違いについてご紹介をしましたが、働き方や雇用条件で同じ部分もあれば大きく異なる部分もあります。
このとき、30代で契約社員へ転職することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
これについては、以下のようなメリットがあります。
- プライベートを優先できる
- 転勤・異動がない
- 大手・有名企業で働ける
- 正社員登用される可能性もある
- 副業ができる
それぞれについて、詳しくご説明をしていきます。
プライベートを優先できる
契約社員は、労働条件を企業と話し合って労働契約を結ぶので、プライベートを重視した働き方を実現することができます。
例えば、正社員の場合はフルタイムで働かなければいけないほか、残業や休日出勤をして働くこともあるため、プライベートな時間を確保できないことも珍しくありません。
それに比べ、契約社員は正社員と同様にフルタイムで働くこともできますが、時短勤務も交渉次第で可能です。
残業についても、労働契約時にしない旨を伝えると、突発的な業務が発生しない限りはほぼ定時で帰宅することができます。
そのため、趣味に時間を費やしたり家族と一緒に過ごしたい30代の方には、契約社員へ転職することで充実した生活を送ることができます。
転勤・異動がない
正社員として働いていると、転勤や異動の業務命令が出れば否応なしに従わなければいけません。
これは、企業は正社員として採用した人材を簡単に解雇できないよう制約をされているのですが、一方で人事権が認められているからです。
そのため、個人的な事情で転勤・異動の業務命令は原則拒否できません。
（人事異動）
厚生労働省 転勤に関する参考資料
第８条 会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び
従事する業務の変更を命ずることがある。
２ 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向さ
せることがある。
３ 前２項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。
このとき、契約社員は企業と労働契約を結ぶときに勤務地・所属部署を限定することができるので、転勤や異動の業務命令を出されることはないので安心です。
なお、基本的にどの企業も契約社員に対して働く地域や部署は限定しているので、もともと転勤や異動とは無縁な働き方を実現することができます。
もし、転勤や異動が苦痛と感じていたのであれば、契約社員で働くことに大きなメリットがあります。
大手・有名企業で働ける
知名度のある大手や有名企業ほど、正社員で転職することはとても難しくなります。
理由は単純で、大手や有名企業の多くは給与が高くて福利厚生も充実しており、雇用についても安定しているからです。
そのため、求職者からの応募が殺到しやすく、1人の採用枠に100人以上の応募が集まることも珍しくありません。
このとき、余程優れたスキルや経験をアピールして臨まなければ、ほぼ不採用となるのが実情です。
それに比べ、契約社員であればたとえ知名度のある大手や有名企業であったとしても、比較的簡単に採用してもらえます。
大手や有名企業で働くことができれば、仕事を通して経験やスキルを身につけることができるので、先々のキャリアに繋げることのできるメリットがあります。
正社員登用される可能性もある
最初は契約社員として働いていたとしても、頑張り次第で努力が認められて正社員登用をしてもらえることもあります。
例えば、転職難易度の高い大手や有名企業で契約社員として働き、会社に大きな貢献ができれば正社員登用してもらえることも夢ではありません。
実のところ、筆者が有名企業に新卒から30歳まで働いていたとき、契約社員から正社員登用された方を数人見たことがあります。
中には、筆者が所属していた部署で派遣社員から1年で契約社員となり、その1年後に正社員登用された30代後半の方もいました。
このように、正社員を前提としては内定の獲得が難しい企業でも、契約社員として働くことができれば、頑張り次第で正社員登用してもらえる可能性は十分期待できます。
副業ができる
最近では、正社員でも副業を認める企業も増えてきましたが、それでも禁止していることの方がまだ多い傾向にあります。
このとき、隠れて副業をしていたとしても、その事実を知られてしまうと減給や退職勧奨を受ける可能性も否定できません。
しかし、契約社員であれば基本的に副業はどの企業で勤めていても認めてもらえることが多いです。
なお、兼業を認めている企業も多いので、様々な経験を積みスキルを高めたい方には契約社員へ転職することに大きなメリットがあります。
ただ、契約社員でも副業や兼業を禁止している企業もあるので、事前に就業規則の確認や労働契約時に企業側へ確認をしておくことが重要です。
30代で契約社員へ転職するデメリット
上述のように、30代で契約社員へ転職することには一定のメリットがあります。
ただ、当然ながらデメリットもあります。
このとき、契約社員へ転職することに対してどのようなデメリットがあるのでしょうか。
具体的には、以下のようなものがあります。
- 雇用は安定しない
- 待遇の変化がない
- 社会的信用がない
それぞれについて、詳しくご説明をしていきます。
雇用は安定しない
30代で契約社員へと転職する大きなデメリットの一つが、労働契約期間の定めがあるので雇用が安定しないことです。
正社員の場合は一度採用が決まると、自己都合や会社都合で退職しない限りは定年まで働くことができます。
ただ、契約社員は企業ごとに決められた契約期間内でしか働けないため、契約が満了するとそのまま退職となってしまいます。
もちろん、あなたと企業側の双方が労働契約の延長に合意をすれば、再び労働契約の期間内は働くことが可能です。
しかし、あなたがどれだけ労働契約の延長をしたくても、企業側にその意思がなければ契約が満了して退職せざるを得ません。
これは、どれだけ優秀な人材であっても、業績が悪化すると契約が更新さにくくなるので、契約社員である以上は雇用が安定しないことを理解しておく必要があります。
待遇の変化がない
契約社員で転職をすると、正社員と比べて圧倒的に給与や福利厚生などの待遇はよくありません。
これについては、無期契約社員となっても同じです。
例えば、正社員は年齢を重ねるごとに給与が上がり、賞与もあるので相応の年収を得ることができます。
また、昇格や昇進も期待できますし、会社独自の福利厚生の恩恵を受けることもできるメリットがあります。
一方で、契約社員はどれだけ仕事を頑張っても給与がアップすることはなく、賞与も基本的にありません。
有期契約であるため退職金もありませんし、福利厚生も社会保険しかないことも普通です。
もちろん、頑張り次第で正社員登用も期待はできますが、企業によっては正社員登用をしないこともあるので、事前に理解した上で契約社員となる必要があります。
社会的信用がない
契約社員は、基本的に雇用が安定しない立場であるため、どれだけ知名度のある大手や有名企業で働いていたとしても、社会的信用は得られません。
そのため、クレジットカードの審査が通りづらく、住宅や車のローンの審査も通らない可能性が高いです。
場合によっては、賃貸契約が通らないこともあるので、私生活に大きな影響を及ぼすこともあります。
ただ、正社員として転職しても勤続年数が浅いと、当面は上記のような審査は通りにくいです。
しかし、契約社員である以上、正社員とは違い何年勤めても社会的信用を得られることはないので、契約社員として働くかどうかをよく検討することが重要です。
30代で契約社員に転職は将来的に苦労をしやすい
ここまで、30代の方が契約社員へ転職するメリットとデメリットについてお伝えしました。
契約社員でしか得られないメリットがあるので、人によっては働きやすい労働条件で仕事をすることは確かにできます。
特に、プライベートを優先したい人や同じ地域で働きたい人にとっては、契約社員で働くことが魅力的と感じるかもしれません。
ですが、総合的に判断すると、やはり30代で契約社員への転職はおすすめできません。
なぜなら、雇用がまったく安定せず給与アップの見込みもないからです。
30代であれば、結婚をしていてもおかしくない年齢であり、仕事に至っては昇給や昇進が期待できる年齢でもあります。
そうしたとき、わざわざ雇用の安定しない契約社員になることは、今までのキャリアと年収を水に流すようなものです。
なお、契約社員の厳しさを具体的な事例でご紹介すると、2008年にアメリカで大手投資銀行として存在した「リーマン・ブラザーズ・ホールディングス」が経営破綻をした当時、世界的に株価が下落して大不況に陥りました。
後に「リーマン・ショック」と呼ばれることとなったこの出来事ですが、日本でも派遣社員の「派遣切り」や契約社員の「雇い止め」が当時起きています。
また、2019年末頃より確認された「新型コロナウイルス」についても同様で、人に日常的に感染するウイルスが世界的に蔓延したこともあり、世界各国の経済に大打撃を与えました。
このとき、経営悪化した企業が日本でもたくさん出たため、派遣社員の「派遣切り」や契約社員の「雇い止め」が起きています。
つまり、企業の経営悪化だけでなく世界的に不況へ陥る問題が発生する度に、契約社員はすぐに雇い止めによって職を失います。
再び仕事を探そうにも、30代の年齢からは苦労することが目に見えているので、正直なところ契約社員ではなく正社員で転職をするべきです。
30代で契約社員に転職するよりプロを頼り正社員を目指す
上述でご説明をした通りで、30代の方が契約社員で転職することはデメリットが高すぎるので、正直おすすめができません。
もし、何らかの事情があるにしても、まずは正社員として転職できないかを模索するべきです。
このとき、転職エージェントを利用すれば、転職のプロであるキャリアアドバイザーがあなたの助けとなってくれます。
キャリアアドバイザーは各業種や職種に熟知しており、知識も豊富なので優れたアドバイスをもらうことができます。
そのため、キャリアアドバイザーに現在の状況を説明し、「本当に契約社員として転職するべきなのか？」を相談してみてください。
カウンセリングのもと、総合的に判断してくれるので、今後のキャリアに役立つアドバイスをもらうことができるはずです。
なお、転職エージェントを利用すると求人の紹介もしてくれるので、あなたの希望条件に合う求人を見つけるきっかけにもなります。
転職にかかわることは、全てキャリアアドバイザーがサポートしてくれるので、効率よく転職活動を進めることができるでしょう。
30代は将来を見据え契約社員に転職するより正社員で働く
30代でも転職をする方は多く、そのほとんどは正社員として採用されることを前提に転職活動を始めます。
このとき、正社員ではなく敢えて契約社員として転職活動を進める方も意外と多いです。
契約社員の働き方に魅力を感じたり、あるいは正社員として働くことが難しいと考えてのことなのかもしれません。
ただ、30代で正社員から契約社員として働くことにはデメリットが非常に高いので、正社員を前提に転職活動を進めるべきです。
このとき、転職エージェントを利用するとキャリアアドバイザーがサポートをしてくれるため、優れたアドバイスをもらうことができます。
キャリアアドバイザーに相談すると、新たな可能性が見えてくることもあるので、まずは相談をしてから決めることが重要です。
そうすることで、あなたに相応しい働き方が見えてくるようになります。
30代の方が転職活動を行う際、多くの人は転職エージェントを利用します。
もし一人で転職活動を行うと、数多くの求人の中から自分に合った条件の企業を探さなければいけません。
また、労働条件や年収の交渉、面接対策、スケジュール管理など、転職に関わる全てを自分一人で行う必要があるのです。
それに比べ、転職エージェントを利用すると、転職市場や求人情報に詳しく、業界・職種の専門知識を持つキャリアアドバイザーからサポートを受けることができます。
なお、以下に30代の方に適した転職エージェントの情報をまとめているので参考にしてみてください。